セレンは、亜鉛や鉄などと同じように必須の微量元素の一つです。体内ではわずか20mg程度しかありませんが、生命維持には欠かせないミネラルです。小腸で吸収されて、生体組織内ではヘモグロビンに0.65ppm、アルファ2グロブリンに5.4ppm、インスリンに4ppmほど含まれます。
セレンは、硫黄を含むアミノ酸であるメチオニン、システインと結合します。両者のもつ硫黄がセレンに置き換わったものが、セレノメチオニンやセレノシステインであり、このセレノアミノ酸の形でセレンは食物中に存在します。セレノアミノ酸は、含硫アミノ酸よりも活性が高いです。セレンは硫黄と同じくアミノ酸の原料であり、タンパク質を構成する元素です。
活性酸素を除去したり、過酸化脂質を還元するグルタチオンペルオキシターゼと呼ばれる抗酸化酵素があります。セレンは、その構成元素でもあります。シミなどの老人斑は、過酸化脂質がタンパク質と結びついてできたリポフスチンが蓄積することで起こりますが、グルタチオンペルオキシターゼは、それらを分解する働きがあります。この酵素はセレノシステインが十分になければ、酵素活性を示しません。
セレンは、グルタチオンペルオキシターゼの構成元素
また、このセレンシステインは、水銀やカドミウムと結合して体内からそれらを排出します。
セレンは、成長促進のために必要です。精子細胞に多く含有され、射精時に精子とともに失います。そのため男性は女性より多く必要とされます。また生殖機能を高めます。セレンには、抗がん作用、抗酸化作用、抗炎症作用、抗老化作用、抗毒性作用、ミトコンドリアの働きを高める、プロスタグランジンの生成、インターフェロンの増強などの様々な作用があります。
抗がん作用
土壌にセレンが少ない地域ではがんの発生が増加。
ビタミンEを一緒に摂取するとがんに対する免疫抗体の産出を高める。
特に、乳がん、肺がんの発生を低下させる。
ミトコンドリアの機能をアップさせる
抗酸化作用
ビタミンEの作用を高める。併用することで抗酸化効果を高める。
抗炎症作用
リウマチ、関節炎を予防する。
抗毒性作用
ヒ素、水銀、カドミウム、銅などの重金属を排出する働きを持つ。排泄力は亜鉛の100倍。
抗老化作用
白内障患者の水晶体は、セレン濃度が通常の1/6と言われる。
プロスタグランジンの生成
プロスタグランジンは各組織の働きを調整する役割を持つ生理活性物質の一つ。血圧や体温調整、血管の弛緩や収縮など多彩な生理作用を持つ。
インターフェロンを増強
また、セレンは免疫機能を強化し、睡眠が正常化したり筋肉機能が高まる作用を持ちます。また、心機能、肝機能、腎機能なども改善させます。
セレンが欠乏すると、筋ジストロフィー、膵臓萎縮症などが起こります。かつて、中国で起こった風土病である克山病は、小児や妊婦に見られた心筋症ですが、これはセレン欠乏によるものという考え方があります。一方で、セレンを中心にミネラル欠乏などの低栄養状態で、活性化したコクサッキーウイルスにより心筋症状が起こされているとの見方もあります。
つまり、セレンはウイルスの活性にも関与するのではないかと考えられています。セレンの血中濃度が低くなると、それまで抑えれていたウイルスが活性化されます。HIV(エイズウイルス)も低セレン濃度の患者で暴れ出すと見られています。
がん
リウマチ・関節炎
筋ジストロフィー
膵臓萎縮症
心筋症(克山病)
セレンの1日あたりの推奨摂取量は、体重1kgあたり3μg前後です。体重50kgの人では150μgにあたります。一方でセレンは取りすぎると過剰症の害が出ると言われます。セレン中毒になると、皮膚炎や爪の異常、下痢や脱毛などが起こる場合や糖尿病になる危険があります。サプリメントでは200μgぐらいまでを目安に摂取するとよいとされています。
参考:オーソモレキュラー医学入門 エイブラム・ホッファー (著), アンドリュー・W・ソウル (著), 中村篤史 (翻訳)/ アスリートのための最新栄養学(下)山本義徳 (著) /甦る健康!セレンの凄い効果―難病克服の切り札はこのミネラルだった! 月の女神の会 (著), 日本成人病予防協会 (監修) / 必ずやってくる3大疾病はセレンの「超」抗酸化力で治す!―ガン 心筋梗塞 脳卒中 舛永 正春 (著)
セレンは、必須微量元素の一つであり、タンパク質を構成する元素