ビタミンD

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ビタミンDは脂溶性のビタミンです。脂溶性のビタミンには、他にビタミンA、ビタミンE、ビタミンKがあります。ビタミンDには、D2からD7まで6種類あります。D1はD2とD3の混合物であることがわかり欠番になっています。その中で生理活性が高く人間にとって重要なのは、D2(エルゴカルシフェロール)とD3(コレカルシフェロール)です。

紫外線によって、D2は植物に存在するエルゴステロールから生成されます。D3は動物に存在する7-デヒドロコレステロール (7-DHC)から作られます。D2は干ししいたけ、きのこ、まつたけなどの植物性食品に含まれ、D3はカツオやアンコウ、サケ、イクラ、スジコなどの魚肉や鶏卵などの動物性食品に含まれます。D2とD3は同等の作用と考えられていますが、現在では、D3の方がD2より効果が高いと考えられています。

ビタミンDを生成するには、食事から摂取するか、日光にあたり皮膚で合成する方法があります。一番の供給源は、紫外線による皮膚での合成です。皮膚で合成されるのは、上記のD2、D3のうちD3です。紫外線に暴露されることによって、原料である7-デヒドロコレステロールからビタミンDの前駆体プレビタミンD3が作られます。その後、プレビタミンD3は体温によりビタミンD3に変化します。

ビタミンD3は脂溶性で水に溶けないため、ビタミンD結合タンパク質と結合してから血流に乗ります。その後、肝臓にたどり着くと修飾(水酸化作用)を受けて、25-ヒドロキシビタミンD3(カルシジオール)に代謝され、血液中に放出されます。ビタミンD3は体内で25-ヒドロキシビタミンD3の状態で存在します。この状態では活性を持たず、全身を巡りながら血流に蓄えられます。

25-ヒドロキシビタミンD3はやはり水に溶けないため、25-ヒドロキシビタミンD3-ビタミンD結合たんぱく質となり血管を流れます。

必要に応じて、25-ヒドロキシビタミンD3は腎臓に運ばれます。そこで生理活性をもつ1α-25ヒドロキシビタミンD3(カルシトリオール)になります。1α-25ヒドロキシビタミンD3は活性型ビタミンD3と呼ばれます。

1α-25ヒドロキシビタミンD3はわずかで、実際に体内では25-ヒドロキシビタミンD3の状態で血液を循環します。そのため、ビタミンDの体内での過不足を測る際には、25-ヒドロキシビタミンD3の血中濃度を測定します。

ビタミンDの生成

ビタミンD3は、25-ヒドロキシビタミンD3の状態で全身の細胞に運ばれ、必要になったときだけ活性化して、免疫などの調整などの機能を発揮することがわかっています。先ほど、腎臓で活性型ビタミンD3に代謝されると言いましたが、実は腎臓以外でもあらゆる臓器で活性型ビタミンDは産生されることがわかっています。

ビタミンという名がつきますが、脳や心臓、腸、血管、筋肉など全身の細胞に直接はたらきかけるホルモンのような働きがあります。通常は活性型である必要がなく、その前駆体である25-ヒドロキシビタミンD3の濃度を高く保持していることが大切です。

ビタミンDの生成に必要な紫外線は、UV-Bと言われる波長280-320nmの領域にある紫外線です。ガラスやプラスチックはUV-Bを遮ってしまうので、窓越しや室内の環境では日光浴をしても紫外線が肌まで到達しません。

また、服も同様に紫外線を遮るので、日光浴で紫外線を浴びるためには、日光の直接当たる場所で、肌を露出した格好でなければビタミンDの生成を望めません。

紫外線は季節変動が大きい。特に冬季で緯度が高い地域は紫外線量が少ない。
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紫外線は、季節や緯度などの環境要因や地理的要因によっても、届く量が変わってきます。緯度の高い地域では、太陽の入射角が低く、あまり多くのビタミンD生成を望めません。夏よりも日照量の少ない冬も紫外線の量が減ってしまいます。

それ以外に個人差もあります。肌のもともと黒い人は、メラニン色素がUV-Bを吸収してしまい多くのビタミンDを生成できません。体脂肪の多い人は、ビタミンDを生成しても脂溶性であるために脂肪細胞に取り込まれ、血中濃度が思ったより上がらない可能性があります。

ビタミンDの働きとして、カルシウムやリンの吸収促進、骨の形成や成長、免疫力の強化、糖尿病の予防、発がん抑制、皮膚のバリア機能調節、高血圧の改善、認知機能の改善などがあります。

カルシウムやリンの吸収
ビタミンDは小腸からのカルシウムやリンの吸収を促進します。血液中のカルシウムを骨に運び、沈着させます。血液中のカルシウム量が減少したら骨から運び出します。腎臓では、カルシウムとリンの再吸収を促し、血液中のカルシウムとリンの濃度を一定に保つよう働きます。

骨の形成や成長
ビタミンDは骨の形成や石灰化を促進します。ビタミンDが不足すると、小児ではくる病、成人では骨軟化症や骨粗鬆症などが起こり骨代謝に異常をきたします。くる病とは、骨の強度が不足して骨が変形したり、低身長や筋力低下が起こる病気です。成長軟骨帯という成長期の軟骨組織が骨へ変化した後に起こるくる病を骨軟化症です。骨粗鬆症は骨密度が低下し骨が脆くなります。

免疫力の強化
ビタミンDは、ビタミンD受容体に結合することで、免疫細胞の中でカテリシジンという抗菌ペプチドを作ります。抗菌ペプチドとは菌と戦うタンパク質のかたまりです。マクロファージ(貪食細胞)内でもビタミンDはカテリシジンを作ります。

そうして細菌やウイルスなどの病原体を食べるマクロファージは殺傷力を強くします。つまり、免疫を強くし風邪やインフルエンザなどの感染症に強くなります。また、腸壁の細胞と細胞の間にできた緩んだ結合(リーキーガット)を修復してより強固な腸粘膜を作ることで、未消化タンパク質などの異物侵入を防ぐことで免疫を正常に戻し、花粉症などのアレルギー症状を改善します。

糖尿病の予防
膵臓のβ細胞にはビタミンD受容体があり、インシュリンの合成と分泌を助ける働きがあります。ビタミンDには血糖値を改善させる作用があります。

発がん抑制
ビタミンDは、細胞の分化・誘導をする働きがあります。細胞核にあるビタミンD受容体に直接働きかけて、細胞の正常な分化へと導きます。また、異常細胞の自然死(アポトーシス)を誘導します。

皮膚のバリア機能を調節
ビタミンDはβ-ディフェンシンという抗菌ペプチドを皮膚上に作らせ、皮膚の常在菌から身を守る働きがあります。アトピー性皮膚炎の症状が冬に悪化するのも、ビタミンDが減り抗菌ペプチドが減ることで悪玉菌により皮膚の炎症が悪化することで起こります。

高血圧の改善
血圧を上昇させる原因物質の一つにアンジオテンシンIIという生理活性物質があります。アンジオテンシノーゲンというタンパク質がレニンやACEという酵素の働きによって、アンジオテンシンIIに形を変え、それが受容体に取り込まれると、血管収縮や交感神経が亢進し血圧が上昇します。活性型ビタミンDは、レニンの分泌を抑制し、血圧の上昇を抑えます。

血圧上昇の仕組み(レニン-アンジオテンシン・アルドステロン系)

認知機能の改善
脳の中にある神経細胞(ニューロン)やグリア細胞には、ビタミンD受容体が存在しています。またビタミンDは脳に異物が入るのを防ぐ仕組みである血液脳関門を通過できます。さらに、脳にはビタミンDを活性化する酵素も存在しています。これらによって脳の神経細胞では活性型ビタミンDを作り出しています。

活性型ビタミンDは細胞の分化・誘導を促す作用があります。脳では神経細胞やグリア細胞の分化・誘導が行われています。つまり、ビタミンDは脳細胞を成長させる物質を作ったり再生することに寄与し、認知機能やうつや統合失調症などの精神疾患などと関係しています。

ビタミンDは脳内で活性酸素の働きを抑制して、神経細胞を保護する作用もあります。パーキンソン病は活性酸素を除去する役割のグルタチオンの減少が一因とされていますが、その発症や予防にもビタミンDは関係します。

ビタミンDは、健康維持と関わる栄養素であることがわかると思います。その中でも近年注目されているのが、がんとの関係です。発がん抑制の効果があるのは上述の通りですが、ケトン食と組み合わせてビタミンDを摂取することでがんをコントロールして予後をよくする取り組みなどが行われています。

参考図書:「ビタミンDは長寿ホルモン―不足するとガン、脳、心血管病、糖尿病、関節症等を招く」斎藤 嘉美 /「サーファーに花粉症はいない ~現代病の一因は「ビタミンD」欠乏だった!~」斎藤糧三 /「花粉症は1週間で治る!」溝口 徹

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