ナトリウムは、生命維持に大切なミネラルです。ナトリウムは塩の一つです。食塩とは塩化ナトリウムを指します。ナトリウムは体内に100g程度あります。その1/3は骨格にあり、残りは細胞外液にあります。ナトリウムは、単体で見るのではなく、拮抗元素であるカリウムと一緒にバランスを保つことで役割を果たします。高血圧はナトリウムが過剰になることで起こりますが、一方で、相対的にカリウムが不足することでも起こります。
ナトリウムは、細胞膜の浸透圧を調整します。酸素や栄養素などの物質交換や排泄は、細胞膜を挟んで細胞内液と細胞外液の浸透圧の差によって行われます。細胞外液にはナトリウムや塩素が多く、細胞内液はカリウムが多くなっています。
ナトリウムとカリウムによって細胞内外で電位差が作られ浸透圧を維持しています。そして、血中のナトリウム濃度を一定に保ち、血圧を正常に維持しています。浸透圧を正常に維持するために、細胞内ではカリウムイオン、マグネシウムイオン、アルブミン、血液中ではナトリウムイオンが働いています。
細胞内に侵入してきたナトリウムはわざわざエネルギー使って細胞外へ押し出し、細胞外にあるカリウムを同様にエネルギーを使って細胞内に取り込もうとします。これは、ナトリウム−カリウムポンプと呼ばれます。エネルギーを使って濃度勾配に逆らって、物質を輸送することを能動輸送といいます。このバランスが崩れると細胞は壊れ、生命を維持する上で支障が生じます。
ナトリウムが増えると水が細胞から血液中に移動します。細胞内のカリウムが増えることで血液から細胞へ過剰に水が入ってくるのを防ぐことができます。カリウムは体内の過剰なナトリウムを排出する働きがあります。
ナトリウムが不足すると胃酸の分泌が減少し、食欲不振や倦怠感が起こります。胃酸の主成分は塩酸で、食事からとる塩分(塩化物イオン)が原料になります。運動などで汗をかくとナトリウムを失います。さらに大量の水を飲むとナトリウムがますます少なくなり、胃酸が減少します。体内のナトリウム濃度が薄くなることで、さらに脱水は進みます。多量の汗をかくときは、適度な自然塩を入れたミネラルを含んだ水を補給しましょう。
腎臓はナトリウムの再吸収を行なっています。腎臓の機能が低下するとナトリウムの排出が増え、低ナトリウム血症となります。
逆にナトリウムを取りすぎると高血圧の原因となるとされます。ただ食塩の摂取で血圧が上昇するのは、食塩感受性のある方で、だいたい20%程度とされています。
ただこれは、食塩(NaCl)で摂取した場合で、その他の微量ミネラルを含む自然塩を適量摂る範囲では、血圧には影響を及ぼしません。腎臓の機能が正常であれば、ある程度の塩分は排出できます。
また、そもそも高血圧の90%は、本態性高血圧とされています。本態性とは、原因がわからないという意味です。つまり、ほとんどの高血圧はその原因がわかっていないのです。
運動などをすると発汗によりナトリウムが失われます。運動後、喉が乾いて水分だけを補給すると、体内のナトリウム濃度はさらに薄まり脱水症状となります。適度な自然塩を入れたミネラルを含んだ水を補給しましょう。
また、ストレスなどで副腎が疲労し、アルドステロンというホルモンが過剰に分泌されるとナトリウムの排出が困難となり、体内に貯めやすい状態となります。この状態になると塩分をとっていなくても血圧が上昇してしまいます。これは二次性高血圧の一つである原発性アルドステロン症です。上記の本態性高血圧とは異なり、ホルモン異常が原因で起こる高血圧です。
参考:新・栄養医学ガイドブック (サプリがもたらす健康の回復)柏崎 良子 (著) / 原因がはっきりしない30の症状はミネラルで治る!登坂 正子 (著) / サプリメントで病気になる!サプリメントで病気を治す! ビタミン・ミネラル編―あなたのサプリメント選びは間違っている!八藤 真 (著) / アスリートのための最新栄養学(下)山本義徳 (著)
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