ビタミンC

ビタミンCは水溶性のビタミンです。ビタミンと聞いて、一番最初にイメージする馴染みの深いビタミンかもしれません。ビタミンCの化学名はアスコルビン酸です。18世紀の大航海時代に壊血病を予防する因子として発見されました。

ビタミンCは、レモンやキウイなどに入っています。その酸っぱいものの正体と思われているかもしれませんが、実はその酸っぱさはアスコルビン酸ではなく、クエン酸です。ビタミンCは体内のあらゆる組織に存在していますが、中でも脳下垂体、副腎、水晶体、白血球に多く存在します。

ビタミンCは体の中で、様々な役割を果たします。コラーゲンを形成したり、免疫力を高めたり、ステロイドホルモンを作るなど多くの役割があります。体はタンパク質でできています。そのタンパク質の30%はコラーゲンです。コラーゲンが不足すると組織が作られなくなります。そのため、血管が脆くなったり骨がきちんと作られなかったりという不具合が起こります。

コラーゲンの形成・維持

コラーゲンを作るのに、タンパク質だけでなくビタミンCが必要です。ビタミンCがないと代謝がうまく進まず、コラーゲンが形成できずに組織や血管などが脆くなります。そうなると皮膚や粘膜、歯肉などから出血がおこります。大航海時代に流行った壊血病は、長期間船上で暮らし野菜や果物を摂取しなかったことでおこったビタミンC欠乏でした。体内のビタミンCが300mg以下になると、壊血病が発症すると言われます。初期には、皮膚の乾燥や筋力低下、うつ状態などから始まり次第に先ほど述べた皮膚や粘膜などの出血が見られるようになります。

免疫力の強化

血液中の白血球はビタミンCを多く含んでいます。白血球は免疫という体が細菌や病原菌などの異物から守る仕組みを担っています。異物が体内に侵入すると白血球が増加し、白血球は異物を細胞内に取り込み無害化します。その際に白血球はビタミンCを必要とします。ビタミンCが豊富にあれば、より強い免疫機能を発揮します。逆にビタミンCが不足すれば、免疫の機能が低下し、風邪などの感染症に罹りやすくなります。

ステロイドホルモンの生成

副腎にはビタミンCが多く含まれます。副腎とは腎臓の少し上にある小さな臓器です。人はストレスがかかると、抗ストレスホルモンを分泌して対抗しようとします。ストレスとは、精神的なストレスだけでなく、暑い寒い、睡眠不足、怪我や病気などといったことも含みます。ストレスがかかると副腎でのステロイドホルモンの分泌量が増加します。その際にビタミンCはステロイドホルモンの生合成を促進します。ビタミンCが不足すれば、ステロイドホルモンの分泌が減り、ストレスに弱くなってしまいます。

抗酸化作用

ビタミンCには、活性酸素を無害化する作用があります。活性酸素は、ウイルスや病原菌を攻撃してやっつける反面、増えすぎるとDNAを損傷し細胞の機能を低下させます。この活性酸素により、人はがんや動脈硬化などの病気なります。活性酸素はいろいろな物質から、電子を奪い取ろうとします。電子を奪われることはその物質が酸化することを意味します。ビタミンCは自ら持つ電子を相手に与えて、還元する働きがあります。

酵素の働きを助ける

ビタミンCは、コラーゲンの合成を促す酵素を助ける役割があります。これを補酵素と言います。コラーゲンが三次元構造を持つために、プロリンとリシンが水酸化される反応においてビタミンCが必要となります。ビタミンCが不足すると、コラーゲン形成障害が起こり、肌が綺麗に形成されなくなったり、消化管粘膜や歯肉などから出血します。

鉄の吸収を助ける

食事から摂った鉄は十二指腸で吸収されます。鉄にはヘム鉄と非ヘム鉄があります。ヘム鉄は肉などの動物性食品に含まれます。非ヘム鉄は野菜などの植物性食品に含まれます。ヘム鉄は吸収がよく、非ヘム鉄は吸収が悪く胃腸に負担がかかります。非ヘム鉄は食物中では三価鉄で多く存在します。細胞内へ鉄を輸送するトランスポーターは二価鉄しか輸送できません。しかし、ビタミンCがあれば三価鉄を還元し二価鉄にすることができ、鉄イオンを細胞内に取り込みやすくなります。

メラニンの生成を抑制

シミの原因は紫外線を浴びることで生成されるメラニン色素です。紫外線に当たると表皮の一番下の基底層にあるメラノサイトという色素細胞からメラニンが作られます。メラニンはアミノ酸の一つであるチロシンから作られます。ビタミンCは、その際に働くチロシナーゼという酵素を阻害し、メラニンの生成を抑制します。

抗アレルギー作用

ビタミンCは、副腎よりステロイドホルモンの生成を促進し、ヒスタミンの遊離を抑制します。ヒスタミンは必須アミノ酸であるヒスチジンから合成されます。ヒスタミンを抑制することで、咳やくしゃみなどのアレルギー症状を緩和します。

L-カルニチンの合成

脂肪酸をミトコンドリアに取りこむためのL-カルニチンの生合成にビタミンCは必要です。L-カルニチンは脂質代謝に関わるホルモン様物質です。必須アミノ酸であるリジンとメチオニンから肝臓や腎臓で生合成されます。

肝臓で異物の解毒を助ける

肉や魚を食べると消化過程にできるアミンと食品添加物である硝酸塩が胃の中で結合すると発がん物質であるニトロソアミンが生成されます。ビタミンCは、ニトロソアミンの生成を抑制します。

神経伝達物質の合成

ビタミンCは、ドーパミンからノルアドレナリンへ変換する酵素であるドーパミン-β-ヒドロキシラーゼの補酵素として働きます。ノルアドレナリンは、興奮系の神経伝達物質です。

このようにビタミンCは様々な働きがありますが、ほかの多くの動物が体内で作れるのと違い、ヒトとサル、モルモットは体内で作ることができません。なので、必ず食事から摂取しないといけません。

ビタミンCは野菜や果物に多く含まれています。多く含む食品として、赤ピーマンや黄ピーマン、ブロッコリー、キウイフルーツやイチゴなどがあります。

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最近では、ビタミンC高濃度点滴が美容分野やがんの治療に使われています。これは静脈注射により、血液中に多くのビタミンCを取り込んで、その効果を得ようとするものです。目的によって点滴量は異なりますが、がんの患者さんの場合、例えば一回の点滴で50-100gを週に3回するなど、経口摂取では到底取り込めない量を摂取します。

ガン治療の場合、ビタミンCの血中濃度が3500-4000μg/mlになるとガン細胞を死滅することができるとされています。

ガン細胞はブドウ糖を栄養として取り込み増殖する性質があります。ビタミンCはブドウ糖と構造がとてもよく似ており、糖質の摂取を極力制限して、ビタミンCを体内に取り込む。すると、ガン細胞は、ブドウ糖と間違ってビタミンCを取り込み、過酸化水素を発生します。ガン細胞は、活性酸素の一つである過酸化水素を分解するカタラーゼという酵素を持っていないため、過酸化水素からの攻撃を受け、死滅するのです。

一方、正常細胞はカタラーゼを持つため、細胞内で過酸化水素を分解し無害化します。この性質を利用してガン細胞のみを選択的に攻撃して死滅させることを目的としたのが、高濃度ビタミン点滴療法です。

風邪やインフルエンザなどの症状にもビタミンCは有効です。できれば感染して症状が出る前に予防しておきたいものです。厚生労働省が発表する日本人の食事摂取基準(2020 年版)では、ビタミンCの推奨量は1日あたり100mgです。ですが、これは予防する至適量に達しません。ましては症状が出てから回復する量としても、なおさら不足しています。

風邪やインフルエンザを予防するために摂取すべき量は、当然食事だけではビタミンCの必要量に追いつかないため、サプリメントの利用が便利です。個人差はありますが、サプリメントを1日あたり2g-10g程度、経口摂取することが予防や回復のための大きな武器となります。

ビタミンCはとても一般的に馴染みの深いビタミンです。ですが、実は、病気を予防したり、病気から治癒するための量は、一般の人が想像できないくらいの高容量です。食事で足りない量はサプリメントを上手く活用することで健康維持に役立てたいものです。

参考:
新・栄養医学ガイドブック (サプリがもたらす健康の回復)柏崎 良子 (著)
サプリメントで病気になる!サプリメントで病気を治す! ビタミン・ミネラル編―あなたのサプリメント選びは間違っている!八藤 真 (著)
アスリートのための最新栄養学(上)山本義徳 (著)
今、注目の超高濃度ビタミンC点滴療法 水野 芳春 (著)
つらくないがん治療 高濃度ビタミンC点滴療法 柳澤厚生 (著)

アスリートのための最新栄養学(上)