鉄は、肉や魚、野菜などに含まれ、生命を維持するために必要不可欠なミネラルです。鉄は体内に3-5g程度あります。鉄は、赤血球の中のヘモグロビンの構成成分です。鉄と一緒にタンパク質もヘモグロビンを作ります。赤血球は全身の細胞に酸素を運搬しますが、それはヘモグロビンの働きによります。

ヘモグロミンはヘムとグロビンから構成されます。鉄原子がヘムの中心にあり、その鉄と酸素が結びついて、酸素を全身に運びます。鉄が不足するとヘモグロビンが作られなくなり、酸素の運搬能力が低下します。その結果、心身に不調をきたします。このように鉄が不足し赤血球が機能しなくなることで起こる貧血を鉄欠乏性貧血といいます。

鉄はヘモグロビンを構成する

ヘモグロビン=ヘム(鉄)+グロビン(タンパク質)
酸素を全身に運ぶのが、ヘモグロビン。それを構成するのが鉄とタンパク質。

鉄には、ヘム鉄と非ヘム鉄の2種類があります。ヘム鉄は、肉類や魚類に含まれます。非ヘム鉄は、ヒジキやほうれん草などの植物に含まれます。鉄は小腸で吸収されますが、ヘム鉄の吸収率が23-25%なのに対して、非ヘム鉄は3-5%と大変吸収が悪くなっています。ヘム鉄は小腸で直接吸収されます。ヘム鉄がポリフィリン環に囲まれており、他の物質の影響を受けにくいのです。また、胃の内壁や腸管を荒らしたりしません。

一方、非ヘム鉄は鉄イオンがむき出しの状態になっています。水に溶けやすい可溶性のものに変換されて吸収されます。非ヘム鉄は、一緒に食べたものの影響を受けやすく、吸収が阻害されやすいのです。タンパク質やビタミンCは鉄の吸収を助ける働きがあります。一方で、タンニンやフィチン酸は鉄の吸収を阻害します。ヘム鉄は、レバーや赤身肉に多く含まれています。

鉄の種類

鉄には、植物性食物に含まれる非ヘム鉄と動物性食物に含まれるヘム鉄がある。
非ヘム鉄は吸収が悪く、ヘム鉄は吸収されやすい。
肉類や魚類を食べる方が、鉄を取り込みやすい。

鉄は、ヘモグロビンとなって全身の細胞に酸素を届け、二酸化炭素を排出する他に、TCA回路や電子伝達系でのエネルギー産生に関わります。生命活動を維持するには、TCA回路を回し電子伝達系にてATPエネルギーを産生し続けなければいけません。鉄はミトコンドリアのTCA回路と電子伝達系でエネルギーを産生する際に必要とされるミネラルです。

鉄はヘモグロビンとして血清鉄以外に、筋肉や貯蔵鉄(フェリチン)として肝臓や骨髄に貯蔵されています。体内の鉄が不足すると、貯蔵鉄を使って不足分を補います。筋肉では、ミオグロビンというタンパク質が酸素を貯蔵することができます。ミオグロビンとして酸素を輸送したり、筋肉収縮に必要なエネルギーを産生しています。

鉄はカタラーゼという酵素をタンパク質とともに作ります。カタラーゼは、活性酸素の一つである過酸化水素を水と酸素に分解します。活性酸素は、老化やさまざまな病気の原因となりますが、鉄が不足することでカタラーゼが作られなくなります。

鉄は神経伝達物質を生成するときに補酵素として働きます。L-トリプトファンからセロトニンを作ったり、L-フェニルアラニンから、ドーパミンやノルアドレナリンを生成する過程でも必要となります。

鉄のはたらき

ヘモグロビンとなって全身に酸素を運搬し二酸化炭素を排出する。
TCA回路や電子伝達系でエネルギー産生に関与する。
貯蔵鉄(フェリチン)として、肝臓や骨髄に貯蔵される。
過酸化水素を分解するカタラーゼを作る。
神経伝達物質を生成する補酵素として働く。

鉄不足がおこると、朝起きられない、イライラ、貧血、冷え性、風邪を引きやすいといった症状が出ます。また、現代多いうつ病は鉄不足と大きな関係があります。不定愁訴など心の不調は、鉄不足に原因であるとされます。上記の通り、鉄は神経伝達物質の生成に関わります。鉄が不足することで、神経伝達物質が生成されなくなり、心を安定に保つ物質が不足するからです。

鉄が不足すると

朝起きられない。
イライラする。
貧血
冷え性
風邪を引きやすくなる。
氷を無性に食べたくなる。
うつ病、パニック障害などになりやすい。

現代の日本女性のほとんどが鉄不足と言われます。一方、欧米では鉄不足対策が取れられています。過去に鉄欠乏貧血が起こり、その解決策として食品への鉄の添加が取られています。アメリカ、イギリス、カナダ、タイなどでは小麦に、フィリピンでは米、ベトナムではナンプラー、中国では醤油に鉄が添加されています。

月経のある女性は多くの鉄を失うため、意識して鉄を摂取する必要があります。貧血の指標として、一般的にはヘモグロビンの数値を参考にするかと思います。ただこの数値だけでは、体内の鉄がどれくらいあるか正確に把握できません。

上述した貯蔵鉄は、すぐには使われませんが、予備的に血清鉄とは別に体内に蓄えている鉄になります。貯蔵鉄をフェリチンと言います。フェリチンは体内にどれくらい蓄えとして鉄があるかを診る指標として大切な指標です。貧血を起こしている場合に、ヘモグロビン値は正常でもフェリチン値が極端に低いという状態が多くあります。

血清鉄と貯蔵鉄をわかりやすく言い換えると、血清鉄はお財布に入っているお金で、貯蔵鉄は銀行に預けているお金であると例えられます。フェリチンが少ないと、いざというときの鉄が不足して鉄欠乏状態に陥るわけです。

アメリカでは、フェリチン値が100を切っている女性は貧血と判断されます。また、40以下だと妊娠を維持することはできないとされるくらい重要な指標になっています。

地球は水の惑星と呼ばれます。一見すると水が多いように思いますが、それは表面積だけです。実際は、地球を構成する元素のうち重量で一番多いのが鉄であり、約35%を占めます。鉄は生命の源といっていいくらい、多くの生命体を支えるミネラルなのです。

参考:うつ・パニックは「鉄」不足が原因だった 藤川 徳美 (著)新・栄養医学ガイドブック (サプリがもたらす健康の回復)柏崎 良子 (著) / 原因がはっきりしない30の症状はミネラルで治る!登坂 正子 (著) / サプリメントで病気になる!サプリメントで病気を治す! ビタミン・ミネラル編―あなたのサプリメント選びは間違っている!八藤 真 (著) / アスリートのための最新栄養学(下)山本義徳 (著) /

アスリートのための最新栄養学(下) ペーパーバック – 2017/9/9
ABOUT US
りゅう栄養大好き人間
栄養は最高です。最強です。栄養たっぷりの人生は楽しいことばかりです。これはマジです。特にオススメは分子栄養学。三石理論。趣味は健康自主管理。食事 / 健康 / 運動 / 映画 / 旅行 / 読書 などを通じて有益な情報を共有できたらと思います。