ミネラルの働き

ミネラルの働き

体が調子のよい状態を保っていること、すなわち、健康であるということは、代謝がうまく回っていることを意味します。代謝と聞くと、古い細胞から新しい細胞へ生まれる変わるといったことを思い浮かべると思います。大まかなニュアンスとしては確かにその通りです。新陳代謝という言葉はまさにそのイメージと合致します。

生化学的に、代謝とは体内でのさまざまな化学反応を指しています。体の中では、何らかの化学反応が起き、その結果、物質が壊れたり、また逆に新たに物質ができたりします。物質が壊れるときは同時にエネルギーを生み出します。また、物質ができるときはエネルギーを必要とします。

物質が壊れて分解することを異化、合成して新たに物質ができることを同化といいます。代謝とは、この異化(分解)と同化(合成)のことです。つまり、体内では作っては壊し、壊してはまた作るといった、分解と合成が常に行われています。この繰り返しが絶えずスムーズに起こっていれば、代謝は活発に働き、体調のよい状態は保てるのです。また、人間が健康で元気であることは、この代謝という仕組みが滞ることなく、常に回っている状態なのです。

代謝とは異化と同化の繰り返しです。

生命を維持するために、体内では様々な化学反応が起こっています。その化学反応を円滑に進めるためには、酵素という物質が必要です。例えば、角砂糖にライターで火を近づけても燃えません。ところが、灰をかけて火を近づけると燃焼します。この反応を促しているのが灰であり、酵素の役割をしています。そして、この酵素の働きを助ける役割をするのが、ビタミンとミネラルです。

酵素の働きを助ける非タンパク質性の単体や化合物を補因子といいます。補因子には、補酵素と金属イオンがあります。

ビタミンは炭素や水素、酸素、窒素を含んだ有機物です。ミネラルは硫黄やリン、ヨウ素、塩素などを除けば、鉄や亜鉛などほとんどは金属元素からなる無機物です。どちらも補酵素や補因子として働き、酵素の働きを助けて、代謝を活発にするために必要不可欠です。

ビタミンもミネラルも身体の機能を調整する大切な栄養素です。どちらも体内で合成できません。ビタミンとミネラルの違いは、ミネラルが身体の構成要素であるということです。

人間の身体は、酸素65%、炭素18%、水素10%、窒素3%で構成されていますが、残りの4%がカルシウムやリン、硫黄などのミネラルです。割合は少なくても、ミネラルは大切な身体の一部なのです。ミネラルは、血液・神経・骨・筋肉・歯など身体を構成する大切な要素です。またホルモンなどの生成にも関わります。

人体にとって生命維持に必要なミネラルとして、厚生労働省に認定されているのは次の16種類があります。主要ミネラルとして、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、リン、硫黄、塩素の7種類、微量ミネラルとして、鉄、亜鉛、銅、マンガン、クロム、ヨウ素、セレン、モリブデン、コバルトの9種類です。

必須ミネラル16種類(硫黄・塩素・コバルトを除いて1日の推奨摂取量が厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」にて示されている。必須ミネラルは100mg以上/日、微量ミネラルは100mg未満/日)

そのほかの役割として、ミネラルは体内pH濃度(ペーハー)の調整をします。pHは水素イオン濃度の水素の量を測ることによって、酸性かアルカリ性かの度合いを示すものです。pHは7を中性として、7より大きくなるとアルカリ性、小さくなると酸性となります。

通常、人間の体の体液は、7.35-7.45の間にあり弱アルカリ性となっています。人体は、アルカリ性イオンがわずかに多い状態です。金属元素であるミネラルはアルカリ性(陽イオン)を示すものと酸性(陰イオン)を示すものがあります。

これらの働きによって、常にpHを保つように恒常性が保たれています。アルカリ金属であるカルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウムは、体内でマイナスの電荷をもち、酸性化した物質があると結合して分子を安定に保ちます。

リンや硫黄、塩素は水に溶けると酸性を示します。これらは酸素と結合して水に溶けるとリン酸、硫酸、塩酸となり、細胞を溶かす作用がありますが、アルカリ性のミネラルと結合することで害から逃れられます。

また、ミネラルは、栄養素を体内に運搬する働きがあります。体内の脂肪酸やアミノ酸はマイナス基を持ち、陽イオンであるカルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウムなどが結合して体液中を動き回ります。

ミネラルが不足するとエネルギーが上手く生成できなくなったり、ホルモンのバランスが崩れたりして体調不良になります。ミネラル不足があれば補充しなければいけませんが、ミネラルはどれか一つに注目するのではなく、大切なのはバランスです。

例えば、亜鉛が過剰になれば鉄や銅が吸収されにくくなります。カルシウムを過剰に摂取すればマグネシウムの吸収が阻害されやすくなります。またモリブデンは銅を排出するため、過剰に摂ると銅欠乏を起こす可能性があります。銅は、鉄とヘモグロビンが結合するのを助ける働きがあるため、銅欠乏になると貧血となることがあります。

また、ミネラルには身体によい働きをするものだけでなく、悪影響を及ぼす有害ミネラルも存在します。有害ミネラルには、アルミニウム、鉛、水銀、ヒ素、カドミウム、ベリリウムなどがあります。農作物に使われる農薬や食品添加物、排気ガス、海洋汚染によって化学物質の蓄積した大型魚を食べることなどによって体内に有害ミネラルを取り込んでしまいます。

こういった有害ミネラルは体内に蓄積すると、酵素の働きを悪くしたり、活性酸素を増やし免疫力を低下させ、病気や老化を引き起こします。四大公害病の水俣病は水銀で、イタイイタイ病はカドミウムの体内蓄積で起こりました。

有害ミネラルは普通に生活していても、知らず知らずのうちに取り込んでしまいます。できれば、取り込まない生活をしたいものですが、同時にデトックスにより体外に排出することも考えておきましょう。そのためにはまずは腸内環境を整えましょう。

参考:原因がはっきりしない30の症状はミネラルで治る!登坂 正子 (著) / サプリメントで病気になる!サプリメントで病気を治す! ビタミン・ミネラル編―あなたのサプリメント選びは間違っている!八藤 真 (著) / アスリートのための最新栄養学(下)山本義徳 (著)

アスリートのための最新栄養学(下) ペーパーバック – 2017/9/9
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