水素ガスでガンが消える!?

今日の栄養図書は、「水素ガスでガンは消える! ?」(赤木 純児著)です。

水素ガスでガンは消える! ?、衝撃的なタイトルです。もし水素ガスでガンが消えたら、現在ガンで苦しむどれだけ多くの人たちが救われるでしょうか。統合医療や代替療法を行う病院ではガスではなく水素水というものが売ってあることもありますが、一体この水素ガスとはどのような効果があるのでしょうか。

ガンに罹れば、普通の病院では、いわゆるガンの標準治療が行われます。三大療法と言われる外科手術、化学療法、放射線治療です。ですが、現状のこの西洋医学の枠組みだけでの治療は、ガンという病気の治療に関しては、決して上手くいっているとは言い難い状況だと思います。

毎年ガンでなくなる方が約38万人近くいて、しかも年々増加している状況を考えると、もし自身がガンになったときに本当にこの標準治療のみを盲信してよいのでしょうか。

多くの人は病院で標準治療を受けます。しかしながら、なかなか厳しい現実が待ち構えます。手術でガンを取り去っても再発したり、放射線や抗がん剤で副作用に苦しみながらも次第に悪くなり、もうやれることはやった。もうできることはなくなったという医者からの通告を受け、最後に緩和ケアを進められます。

本当にこのような治療の流れは正しいか今一度考えてみる必要があります。このようにして、もう医者に見放されたいわゆるガン患者が現在約60万人いるのです。

本書の著者である赤木先生は、ハイパーサーミア+低容量抗がん剤+水素ガス+オプジーボという組み合わせで患者さんを治療されています。驚くほど患者さんの予後を伸ばされていて、症例を上げながらその効果を訴えています。

ハイパーサーミアとは、温熱療法の一つです。体外から電磁波により加温し、42°Cになるとガン細胞は死滅するという性質を利用した治療の方法です。

オプジーボは、皮膚ガンの一種である悪性黒色種(メラノーマ)の治療のために作られた薬剤です。現在は皮膚ガン以外にも肺ガン、胃ガン、腎ガン、悪性リンパ種などにも保険適用で受けられますが、それでも薬価は高いです。

上述の通り、赤木先生は水素ガスだけでガンに対抗しているわけではありません。本書で紹介されているのは、従来の標準治療に温熱療法を加えた治療法をさらに効果のあるものにするために、水素を使ってガンからの生還を目指そうとするアプローチです。

これを聞くとやはり対処療法の限界を感じていたり、実際にガンの対処療法を受けて疲弊している人にとっては、何だ、やっぱりベースは西洋医学か、と敬遠するかもしれません。私も西洋医学に関しては否定的な立場です。

ですが、だからと言って、この治療がもたらせている成果に関しては決して無視できないものがあると思います。情報の一つとして知っておく価値は十分にあります。

ガン治療で大切なのは、ガンが治るということです。個人的には治ればどんな治療法でもいいと思っています。どんな方法でもと言っても、もちろん、私自身がガン患者という立場に置かれたら三大療法は回避するでしょう。

そのときに大切なのは、選択肢を多く持っておくことだと思います。もっと言えば、治癒するためのあらゆる情報です。そして、その治療法や情報の中から患者自身が納得して自分で選べるということです。

赤木先生は腫瘍免疫医です。その治療は、ハイパーサーミア+低容量抗がん剤+水素ガス+オプジーボという組み合わせです。その治療法だけを聞くと西洋医学ベースと思うかもしれませんが、この先生の裏側にある考え方は、免疫です。

免疫を活性化させて、免疫でガンを治療するという考えです。標準治療が今までやってきたガン細胞を死滅させるが、正常細胞も同時に攻撃して結果的に免疫力を落とす方法ではなく、免疫の力そのものでガンに立ち向かう方法を取られているわけです。

ガンには、治りやすいガンと治りにくいガンがあります。治りやすいガンとは免疫原性をもつガンです。免疫原性とは、ガン細胞がどれだけ免疫細胞に見つけられやすい抗原を持っているかを示しています。つまり、ガンである目印を持っているかどうかです。

免疫細胞に認識されやすい抗原を持っているガン細胞は、増殖する前に免疫細胞によって攻撃されるため転移しにくい。逆に免疫細胞から認識されずらい、つまり免疫細胞から逃れやすいガン細胞は、転移しやすいガンとなります。

ガン治療における免疫療法には、ガン免疫サイクルという考え方があります。それは下記のサイクルです。

ガン免疫サイクルには7つの段階がある。

1.ガン抗原の放出

放射線や抗がん剤治療でガン細胞が破壊され、抗原が放出される。

2.ガン抗原の提示

樹状細胞がガン細胞を貪食して分解し、ガン細胞であることの目印を付け、T細胞に提示する。(このような細胞を抗原提示細胞といいます)

3.感作・活性化

目印を覚えた樹状細胞はT細胞に伝達し、T細胞を活性化します。抗原提示細胞がガン抗原をT細胞に提示する段階をプライミング相といいます。T細胞はキラーT細胞(細胞障害性T細胞)となります。

4.ガン細胞へ遊走

キラーT細胞は血管内を遊走して、ガン細胞を探します。

5.ガン細胞への浸潤

キラーT細胞がガン細胞に到達して浸潤します。

6.ガン細胞を認識

キラーT細胞が第3段階で提示された目印と照らし合わせ、ガン細胞であることを認識します。

7.ガン細胞を攻撃・排除

キラーT細胞がガンを攻撃して排除します。エフェクター相といいます。第1段階に戻り、再びガン抗原が放出されます。

ガン細胞は、普通の人でも毎日3000個から5000個程度生まれていると言われます。ですが、このガンの免疫サイクルが正常に動いていれば、ガンにはならないとされています。当然、もしガンになったとしても、治療をしていくうえで、この免疫サイクルを働かせることが鍵となります。

この7段階のうち、どれか一つでも障害が起きると免疫はきちんと働かなくなり、ガンの増殖、そして、再発という流れを辿ってしまいます。

ところがガンはとても厄介な細胞です。ガンの中でも進行ガンや再発ガンは、サイトカインという物質を分泌して、この免疫サイクルを働かせにくくします。それと同時にガン細胞は免疫細胞に見つからないように、それまで出していた自分がガン細胞であるという目印を出さないようにします。

ガン免疫サイクルの第7段階で、キラーT細胞上にPD-1という物質が発現します。PD-1とは、受容体の一つでPD-L1という物質と結合する性質があります。ガン細胞上に発現したPD-L1と結合すると、キラーT細胞はガン細胞を攻撃できなくなります。このようにして、ガン細胞は免疫をかいくぐって生き延びようとします。これを免疫抑制といいます。

1992年に京都大学の本庶佑教授は免疫抑制に関わるPD-1を発見しました。そして、2018年にノーベル賞を受賞しています。PD-1とPD-L1が結合を断ち切ることができれば、キラーT細胞は抑制されなくなり、再びガン細胞を攻撃することができます。

オプジーボは、PD-1とPD-L1が結合しないように作用する免疫チェックポイント阻害薬と呼ばれる薬です。オプジーボはガン細胞が攻撃されないようにキラーT細胞にかかっていたブレーキを外し、再び攻撃できるようにします。しかし、オプジーボには免疫抑制を外す効果がある一方で、間質性肺炎や糖尿病の副作用があるとされています。

一方で本書のメインとなっている水素ガスですが、これはそもそもどういったものか。水素は原子番号1で一つの電子と一つの陽子という最小単位でできている元素です。宇宙で最初にできた元素で宇宙で最も軽く、宇宙を構成する元素の90%を占めています。

水素分子は常温で無味無臭の気体です。水素は非常に軽く小さいため、すぐに拡散していきます。水素水は効果がないという声があります。これは水素を水に溶かしたものですが、炭酸水が栓を開けてしばらく置いておくと、炭酸が抜けてただの水になるのと同様に、開栓するとすぐに水素が抜けていくからです。

そもそも水素自体をペットボトルや容器に詰めていても水素はそこから抜けている可能性があります。水素は筋肉や骨なども通過します。水素は体内では、酸素、炭素についで多い元素です。水はもちろん、タンパク質、脂質、糖質などにも多く含まれ、人体には欠かせません。

さて、ここからがポイントです。水素ガスはミトコンドリアを活性化することがわかっています。そして、免疫抑制を解除する働きがあります。この場合、オプジーボとは仕組みが違います。水素ガスは、キラーT細胞のミトコンドリアに直接働きかけて、PD-1を出さないようにします。

キラーT細胞は、ガンとの戦いを続けていくと疲弊してしまいます。疲弊したキラーT細胞では、ミトコンドリアの機能が低下しています。この状態だと、オプジーボを利用しても免疫抑制を解除できません。

そこで、水素ガスの力を使い、疲弊したキラーT細胞のミトコンドリアを活性化し、その機能を活性化させます。すると疲弊したキラーT細胞は、通常のキラーT細胞に戻ります。もしくはサプレッサーキラーT細胞(制御性T細胞)というPD-1を発現していながらもミトコンドリアが正常なT細胞になります。

水素ガスでミトコンドリアを活性化できる。

進行ガンや末期ガンの患者さんでは、キラーT細胞の多くが疲弊して、ガン細胞に対抗できない状態となっています。水素ガスはこれらの疲弊したキラーT細胞のミトコンドリアの機能を改善し、活性化した通常のキラーT細胞に戻すことができるので、再びガン細胞と戦うことができるます。そのため進行ガンや末期ガンの患者にも有効とされています。

オプジーボは、ガン細胞が出すPD-L1との結合を阻止するため、PD-1を発現してミトコンドリアの機能が正常なサプレッサーキラーT細胞(制御性T細胞)には有効ですが、疲弊したT細胞のミトコンドリアの機能を回復させて、通常のT細胞に戻すことはできません。つまり、オプジーボ自体にミトコンドリアを活性化する働きはないということです。

ただ、上記の水素ガスで全ての疲弊したキラーT細胞が通常のキラーT細胞に戻るわけではなく、いくつかはサプレッサーキラーT細胞(制御性T細胞)になるそうです。つまり、オプジーボを水素ガスと併用することで、水素ガスで元気になったキラーT細胞のうち、まだPD-1を発現しているサプレッサーキラーT細胞に対しては有効に働き、免疫抑制を解除することができるため、相乗的に効果が上がることになります。

上記のような効果を期待して、水素ガスを併用した治療法を本書では主に紹介されていました。もしガンになったときあなたはこの治療法を選択しますか。抗がん剤やオプジーボに関して不安要素のある方もいるでしょう。要はそれぞれご自身が考えて、選択すればよいと思います。

この本を読んで、私自身は水素ガスにとても興味を持ちました。水素に健康維持や病気からの回復など効果がある話は知っていましたが、実際に一時期ブームになった水素水や水素風呂などに対しては、一方で効果がほとんどないも言われています。

ただ、水素ガスをそのまま吸引して、直接気体として体内に取り込むことは、水素をなるべく取り逃がさず、体内に働かせるという意味では、本書の治療例などからも多いに可能性を感じます。

免疫を活性化させるとは、細胞一つ一つのミトコンドリアの機能を活発にして、それを維持することです。そのミトコンドリアの機能を高める働きを水素が持っているということが、重要なポイントです。

本書では、免疫力を高めるにはミトコンドリアをいかに増やすかに言及しています。水素ガス以外にも、コエンザイムQ10、有酸素運動、40℃の温浴、質のよい睡眠、ストレス解消、腸内環境の整備などがあります。これらはどれもミトコンドリアを活性化するためのアプローチです。

これ以外にもミトコンドリアを活性化する方法はまだまだあると思います。ガンの治療に関しては、選択肢はたくさん持っていた方がよいと思います。水素ガスに関して興味のある方は、ご一読されるとよいと思います。

栄養図書:「水素ガスでガンは消える! ?」(赤木 純児著)

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