人間が病気になったり、老化する原因は、活性酸素です。呼吸で取り込んだ酸素の2%は活性酸素になると言われます。細胞内の小器官であるミトコンドリアは、体内に取り込んだ栄養と酸素を使ってエネルギーを生み出します。この過程において活性酸素が生まれます。つまり、酸素を必要として生きていく限り、同時に活性酸素との付き合いはずっと続いていきます。
活性酸素は全てが悪いわけではありません。活性酸素には4種類あります。酸素を使ったエネルギー代謝の際に作られるのがスーパーオキシドで、ミトコンドリアで大量に作られます。スーパーオキシドは、反応性は低く、細菌やウイルスから体を守ります。スーパーオキシドが分解酵素であるスーパーオキシドディスムターゼ(SOD)によって分解されてできるのが過酸化水素です。過酸化水素は比較的安定していますが、その酸化力でウイルスや細菌を攻撃します。過酸化水素はカタラーゼで水と酸素に分解されます。この過酸化水素が鉄や銅などの金属元素と反応して生じるのがヒドロキシラジカルです。ヒドロキシラジカルは最も毒性が強く、病気や老化を引き起こす直接的な原因となる悪玉活性酸素です。反応性が高く、不安定でごく周辺の生体物質に酸化障害をもたらします。もう一つは、一重項酸素です。これは紫外線によって皮膚の細胞内に発生して、シミやシワなど肌の老化を引き起こします。このように活性酸素はその酸化力で生体を防御することもありますが、過剰な酸化作用によって生体に悪影響を及ぼす存在です。
健康で長生きするには、人体に障害をもたらす悪玉活性酸素をなるべく上手く処理することが鍵となります。
そこで登場するのが水素です。実は、水素は宇宙で最も多く存在する元素で約7割を占めます。地球上では、水素はほぼ水素分子としては存在しておらず、多くは水として化合物の状態で存在します。
水素は悪玉活性酸素だけを選択的に除去する働きがあります。活性酸素を除去する働きを持つものをスカベンジャーと言います。スカベンジャーとは掃除屋を意味し、酸化障害を起こす物質を一掃する働きを持つ抗酸化物質を指します。酸化ストレスに対して効果的な作用を持つ抗酸化物質には、水素以外にもビタミンCやビタミンE、ポリフェノール、カテキンなどがあります。そのため、悪玉活性酸素からの攻撃を防ぎ、病気や老化をしないためにこれらの栄養素を含む魚介類、緑黄色野菜、ナッツ類、大豆などの食品の摂取が勧められるわけです。しかし、これらの栄養素は分子量が大きく、細胞へ到達しにくいという欠点があります。それに比べて水素は分子量が小さく、宇宙一小さい分子です。そのため、細胞の隅々まで浸透しやすく、そこでヒドロキシラジカルを消去します。つまり、他の抗酸化物質では届かないところまで入り込んで大きな抗酸化力を発揮するのです。これが水素が美容や医療・健康分野で注目されている理由です。
水素は、病気の原因となる活性酸素を除去する働きを持つ。
水素には先に挙げた悪玉活性酸素を除去する抗酸化作用以外にも、抗炎症作用、抗がん作用、抗アレルギー作用、疲労回復作用、血流促進作用など多くの効能があります。冒頭で述べたミトコンドリアがエネルギーを産生する際に発生する活性酸素に対しても働き、エネルギー代謝を活性化して、ミトコンドリアの働きを助けます。
抗炎症作用、抗がん作用、抗アレルギー作用、疲労回復作用、血流促進作用
こういった多くの効能のおかげで様々な疾患に対して、水素は改善の手助けをすることが明らかになってきています。例えば、水素は、虚血性再灌流(きょけつさいかんりゅう)による障害を防ぎます。虚血性再灌流とは、心筋梗塞や脳梗塞などで一時的に血流が止まった後に蘇生し、再度多くの血流が組織や臓器に流れ込んだ時に、多くの活性酸素が発生することで組織や臓器が損傷を受けることです。水素は虚血性再灌流を防ぎ、心肺停止後の生存率をあげ、患者の予後の改善に効果を発揮することがわかっています。
また、体内に炎症が起こり、それが慢性化すると、がんや糖尿病、潰瘍性大腸炎などの様々な病気につながります。水素は、その炎症を抑える作用があります。水素は炎症を促進させる炎症性サイトカインの発生を抑制します。水素が改善させる疾患は数多くあります。
がん、糖尿病、潰瘍性大腸炎、アトピー性皮膚炎、関節リュウマチ、不眠症、認知症、パーキンソン病、肌荒れ、ニキビ、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、高血圧、肥満、うつ、統合失調症などです。
水素療法とは、水素の抗酸化作用を使って、ヒドロキシラジカルを除去し、健康維持や疾病からの回復を図るものです。また、医療だけでなく、シミやシワ、くすみやたるみなどの改善を目的とした美容、トレーニングや運動をした後の疲労回復などに対してもその利用が広がっています。水素を生体へ取り込む方法は、水素水や水素ガス、水素サプリメント、水素風呂、水素点滴など様々なものが出ています。
水素の抗酸化作用を利用して、ヒドロキシラジカルを除去し、健康回復を図る。
水素水や水素ガス、水素サプリメント、水素風呂、水素点滴などがある。
以前、水素水が流行りました。水素は水に溶かしても、通常の環境(1気圧)では、最大1.6ppmしか溶けません。1ppmとは100万分の1のことです。つまり、0.0001%です。水素水1リットル中に、最大でも水素はわずか1.6mgしかありません。体積に換算して、約17.6mlです。たったこれだけの量の水素を取り込むのに水素水1リットルを飲むのは、全く無意味ではないですが、大変です。
そう考えると、水素水だけでなく、その他の方法も利用した方が有効です。水素サプリメントは、サンゴカルシウムやケイ素、クエン酸カリウムに水素を吸着させたもので、カプセルを飲むと胃や腸で水素を発生させます。水素ガスは、水素を発生させる装置を使って鼻から水素ガスを吸引します。水素風呂は、入浴時に水素を発生させる装置や入浴剤などによって、湯船に水素を発生させます。水素点滴は通常はクリニックでしかできず、また高額で一般家庭での実施は難しい方法です。個人が家庭でできるものとして、水素ガスの吸引をメインに、水素水や水素サプリメント、そして入浴には水素風呂といったように、日常生活の中でいくつか方法を組み合わせて、水素を体内に取り込むことが賢明と言えそうです。
また、水素は副作用がほとんどなく安心です。実は人の体内では水素が発生しています。食物繊維を餌にして水素発生菌と呼ばれる腸内細菌が嫌気性発酵で水素を発生させています。発生した水素は血流に乗って全身に回り、肺から呼気として排出されています。長寿の方々は、この呼気に含まれる水素の量が多いと言われています。
健康を保つためには、水素を上手に生活の中にとり入れていくことが必要な時代になっているかと思います。水素に関する書籍も近年かなり増えてきました。ぜひ下記に挙げる書籍は良書ばかりなので参考にしてみてください。














スーパーオキシド…細菌やウイルスから体を守る。反応性は低い。
過酸化水素…強い酸化力で細菌やウイルスを攻撃する。比較的安定している。
ヒドロキシラジカル…毒性が強い。反応性が高く不安定。悪玉活性酸素と呼ばれる。
一重項酸素…紫外線で皮膚の細胞内に発生して、シミやシワを作る。